昨今,相続法の改正により,配偶者居住権など遺言によってつくることもできる権利が新たに規定され,自筆証書遺言の作成・保管を手助けする制度もできました。遺言によって生じる遺留分に関する争いの解決策についても改善され,遺言書作成が推進されているといっても過言ではないと思います。
他方で,財産承継において,民事信託が利用されることもあり,遺言相続以外の方法も活用されるようになっています。
遺言や民事信託は,後継者へのルールであると同時に,メッセージ発信でもあります。何を目的にいかなる制度を利用して何を決めるか,法律の専門家としてかかわっていくべきことが多々あると感じています。
また,オーナー企業が多い現況からすれば,事業承継も同様の悩みを抱えているといえます。雇用関係,取引先や提携業者との関係などを考えると,複雑さはなお一層です。「会社」といういわば社会的責任を帯びた組織を存続する以上,自己財産処分を超えたものとして考えていかなければならない場合もあります。当然,税務上の問題も考えなければなりません。この点は,弁護士のみならず,公認会計士,税理士,司法書士,社会保険労務士,中小企業診断士などが自立的に連携することが望ましいと考えます。
当事務所では,政策的な必要性も相俟って,日々改正が行われる相続・事業承継の分野に,研究・研鑽を怠らずに取り組んで参ります。