コラム・チェックポイント

2020.09.24 渡辺 数磨

大樹に挑む ① ~兄弟姉妹の代襲相続には注意~

相続プロパーのお話しです。

「50年程名義変更していなかった曾祖父名義の不動産で生活しています。そろそろ名義変更したいのですが…」こんなご相談もあります。

「50年前」は,家族関係を取り巻く状況は随分異なります。兄弟姉妹も多く,養子縁組も今より利用される頻度も高く,相続を繰り返す内に,相続人が数十人規模となり,大変な遺産分割になります。相続関係図を作成すると,「この木何の木…♪」と歌いたくなるような枝分かれぶりです。最近こうした案件に弁護士が関わることも増えてきました。事実調査,法律の改正,及び全国各地にいる未知の相続人との交渉など,大変困難な案件といえます。

相続法は,改正を繰り返しています(※昨年も改正されました。)。今回のように50年前の遺産分割は,その後相続が繰り返されているケースも多く(数次相続といいます。),その都度適用される法律も異なるので注意が必要です。

兄弟関係についての代襲相続をとってみても以下のような変遷があります。

昭和22年5月3日~同年12月31日に死亡

この場合は,家督相続制度を応急的に停止した応急措置法が適用される。そして,同法は,兄弟の子には相続権は認めておらず,兄弟の子や孫に相続権はない。

昭和23年1月1日~昭和55年12月31日に死亡

この場合は,改正前民法が適用される。同法は,兄弟の子孫全般に代襲相続権を認めており,兄弟の子であっても孫であっても相続権がある。

昭和56年1月1日以降に死亡

この場合は,現在の民法が適用される。それによれば,兄弟の子は相続権があるが,兄弟の孫には相続権がないということになる。(民法889条の2項が、代襲相続の規定・民法887条2を準用するものの再代襲相続の規定・民法887条3項は準用していない)

そのとき,そのときの法律によって相続人の範囲すらも変るのでとてもややこしいですので要注意です。