2020.04.29
賃貸の仲介手数料の上限は半月分
仲介業者が敗訴!
賃貸住宅を借りる際に家賃1カ月分の仲介手数料を支払った男性が、本来は半月分の仲介手数料を払えば足りたと主張し、仲介業者に対して差額分の返還を請求した訴訟について、東京高裁(一審は簡裁なの高裁が上告審です。)が、令和2年1月14日、請求を認める地裁判決を支持する判決を下し、差額分の返還請求を認めました。
不動産を借りる際に家賃1カ月分の仲介手数料を支払うことが一般的であることを踏まえると、上記判決は今後の不動産実務に影響を与える可能性があります。そこで、ここでは上記判決を簡単に解説いたします。
宅建法上はそもそも原則半月分
上記判決は、仲介業者に対して半月分を超える仲介手数料の返還を命じましたが、そもそも宅建法上、入居者が負担する仲介手数料の上限は税抜きで家賃半月分と決まっています。例えば、家賃が月額10万円だとすると、入居者は最大5万円の仲介手数料を払えば足りることになります。
ですので、この意味においては、上記判決は、「仲介手数料の上限は家賃半月分である」とのルールを新たに作ったわけではなく、あくまで宅建法上の原則的なルールを確認したにとどまります。
ただ、この宅建法の規定には例外があり、仲介契約が成立する前に依頼者の承諾を得ている場合には、入居者に家賃1カ月分の仲介手数料の負担を求めることができるとされています。上記判決で問題となったのは、まさにこの例外が適用されるか否かについてです。
仲介契約が成立したのはいつか?
そこで、問題になるのは仲介契約の成立の時期です。上述のとおり、家賃1カ月の仲介手数料を請求するためには、仲介契約が成立する前に、1カ月分の仲介手数料について入居者が承諾していることが必要なのですが、上記判決では、その前後が問題になったのです。
今回の事件での経緯は次のとおりです。
- ①賃料物件の問い合わせ・入居希望
- ②賃貸住宅入居申込書の提出
- ③物件を決めて契約する旨の連絡
- ④家賃1カ月分の仲介手数料を記載した明細の交付
- ⑤重要事項説明及び賃貸借契約書の作成
まず、仲介業者は、⑤の段階で仲介契約が成立しており、その前の④の段階で仲介手数料を家賃1カ月分とする承諾を得ていると主張しました。一方で、入居者は、②、③の段階で仲介契約は成立しており、承諾があったとしてもその後であると主張したのです。
上記判決は、③の段階で仲介契約が成立しているとしたうえで、その以前に入居者の承諾を得ていないため、仲介業者は入居者に家賃1カ月分の仲介手数料を負担させることはできないとしたのです。
実務への影響は?
今回の判決は、仲介手数料のルールを変更したものではないですが、家賃1カ月分の仲介手数料が一般的であるなかで、その負担を請求できない事例について判示したという面で重要です。
賃貸物件の仲介手数料はそれ程大きな金額にはならないことが多いですが、余計なトラブルを避けるためには、仲介業者としては、仲介手数料について入居者から事前承諾を得ることを徹底するべきでしょう。
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