2020.04.29
保証契約の極度額設定が義務化
改正民法が令和2年4月1日に施行
令和2年4月1日に改正民法が施行され、不動産実務に広範囲にわたる影響が生じています。
なかでも、保証契約を締結する際、極度額の設定が義務になったことは、不動産実務において特に注意を要する点です。不動産を賃貸する場合に保証人を立てることが一般的ですが、民法の改正によって、令和2年4月1日以降は保証する金額の上限を定めないと、保証契約が無効になってしまうことになったのです。
極度額の設定とは?
民法改正前は、賃貸借の保証人は、賃借人の未払賃料など一切の債務を保証することが一般的でした。そのため、実際に賃貸人が保証人に対して請求をした際、保証人が想定していたよりも大きな金額の負担を求められ、トラブルになるケースが多々ありました。
そこで、今回の民法改正では、保証契約を締結する際に、保証する金額の上限である「極度額」を設定することが義務になり、極度額の設定がされていないとそもそも保証契約は無効であると定められたのです。改正民法の施行後は、賃借人の債務について保証契約を締結する際、明確に例えば「極度額は100万とする」と書面で定めることが必須です。
極度額は幾らにすればいい?
極度額を適正額については、法律上決まりは全くありません。ただ、極度額が余りにも高すぎる場合は、保証人を見つけることが難しくなってしまうでしょう。
そもそも、賃貸借の保証契約は、賃借人の賃料不払等によって賃貸人に生じる損害をカバーすることを目的とします。ですので、極度額を定めるにあたっては、賃貸人に通常生じ得る損害額が目安になるでしょう。
この点、国土交通省が作成した「極度額に関する参考資料」になるところ、同資料では、賃料の未払いが生じてから裁判を通じて物件を強制的に明け渡せるまで平均 9.1カ月掛かり、強制執行経費の平均 は50.7 万円とされています。
そうすると、賃料未払のため物件の明渡しを求める事案で、強制執行までいくことはそこまで多くはないですが、明渡しの強制執行をすることを見据えても、賃料1年分程度で賃貸人の損害はカバーできるでしょう。そのため、極度額を定めるにあたっては、賃料1年分が一つの目安になります。
ただ、一般の保証人に請求した場合、任意に支払いをしないことが間々あるので、時間的・経済的なコストが掛かることになり得ます。今回の民法改正を機会に、個人に保証を求めるのではなく、保証会社の利用をすることも一考に値するでしょう。
いつの保証契約から極度額を定めないとダメか?
極度額の設定が義務となるのは、原則として、令和2年4月1日以降に新たに保証契約を締結する場合です。
ですので、賃貸借契約が令和2年4月1日以降に更新された場合であっても、通常は、保証契約の極度額を新たに設定する必要はありません。
ただし、賃貸借契約の更新にあたって、賃料が大幅に増加するなどその内容が大きく変わる場合は、保証契約に関して新たに極度額を設定することを要することがあります。この点は注意が必要です。
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