コラム・チェックポイント

2023.08.29 内田清隆法律事務所

免責条項は無効になるかも!

契約書や利用規約を作成するときに、損害賠償責任を免除する内容の条項、いわゆる「免責条項」を設けることが多々あります。免責条項がなければ、通常、因果関係のある損害をすべて賠償する必要があるので、思いもよらない賠償責任を負担することになります。そこで、そのようにならないように、契約書や利用規約において、初めから、損害賠償責任を負わないことを明記しておくのです。

ただ、免責条項は無効になる場合が多々あります。免責条項が無効になれば、原則どおり、因果関係のある損害をすべて賠償しなければなりません。
損害賠償の金額を制限する条項を設けていれば、賠償額の上限を定めておくことができたかもしれませんが、免責条項を設けることで、そのようなチャンスを失ってしまうことになりかねません。

そのため、免責条項を設ける場合には、あらかじめ無効になるかどうか想定しておくべきです。そして、免責条項が無効になることが想定されるなら、代わりに、損害賠償の金額を制限する条項を設けるなど、リスク管理のために別の手法を取ることを検討するのがよいでしょう。

免責条項が無効になる場合とは?

⑴ 事業者が「消費者」と契約する場合

消費者を保護するための法律として、消費者契約法という法律があります。この法律では、事業者の損害賠償責任を全部免除する条項は無効であると定められています。

そのため、消費者を相手とする契約や利用規約を作成する場合には、損害賠償責任を全部免除するような条項を設けるのでなく、損害賠償責任を一部制限するだけの条項にする必要があります。

ただし、故意または重過失がある場合に、損害賠償責任を一部だけでも制限するとすれば、そのような条項も消費者契約法により無効になります。そのため、損害賠償責任を制限する条項を設ける場合は、故意または重過失がある場合は損害賠償責が制限されないことを明示しておかなければなりません。

※ サルベージ条項規制に注意

令和4年に消費者契約法(令和5年6月1日から施行)が改正され、消費者が「事業者に故意・重過失がある場合に損害賠償請求をすることができる」と一見して理解できない条項は、無効とされることになりました。

そのため、以下のような条項は、事業者に故意・重過失がある場合は適用されないと解釈することができますが、無効とされる可能性が高いです。
・「法律上許容される場合において、当社の損害賠償額は最大〇万円とする」
・「法律上許される限り、当社は、本サービスに関してユーザーが被った損害につき、当該ユーザーが当社に支払った対価の累計額を超えて賠償する責任を負わない」

※ 故意・重過失の場合を除く損害賠償責任の一部制限でも無効になることはある!

損害賠償責任を一部制限する条項として、損害賠償責任の90%を免除するような条項が考えられます。この場合、事業者が故意・重過失の場合を除くことを明示していれば、無効になることはないように思えますが、消費者契約法10条により、「消費者の利益を一方的に害する」として無効になることがあります。そのため、損害賠償責任を一部制限する場合には、妥当な範囲に留めることが必要です。

⑵ 事業者間で契約する場合

事業者(個人事業者、会社等)間の契約や利用規約に関しては、基本的には、損害賠償責任を免除・制限する条項を自由に定められるとされています。

しかし、損害賠償責任を免除または制限する条項が、信義則や公序良俗に反し不当である場合には、無効になる場合があります。
実際、裁判においても、故意・重過失がある場合にも損害賠償責任が免除・制限する条項に関して、無効であると判断しているものは多いです。一方、故意・重過失の場合を除いていれば、無効になるケースは極めて少ないです。
そのため、重過失が故意と言ってもいいほどの著しい過失がある場合に認められるだけなので、最初から、故意・重過失の場合を除いて損害賠償責任を免除・制限していた方が無難です。

⑶ 不動産取引

一部の不動産取引については、特別に法律で損害賠償責任の免除・制限が禁止されているので、注意が必要です。

・新築住宅の請負人・売主は、目的物の引渡時から10年間は、構造耐力上主張な部分等については、契約不適合責任を負う義務を負い、これに反する特約は無効となります(住宅の品質確保と促進等に関する法律94条、95条)。

・宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地・建物の売買契約において、契約不適合の通知期間を2年以上とする特約を除き、契約不適合責任を軽減する内容の特約をすることが禁止されており、これに違反した特約は無効になります(宅地建物取引業法40条)。