2021.09.30
大樹に挑む ③
最近,相続人数十名に及ぶ相続案件が解決しました。
依頼から2年近くかかりましたが,率直にいって,むしろ早い方だとすら思います(依頼者の実感とはかけ離れているかも知れませんが…)。
遺産分割事件は,通常,①話し合い→②調停→③審判という順序で推移します。
①自分達で話し合ってまとまらなければ,②裁判所にて中立的な第三者(調停委員)を交えて話し合い,③それでも解決できない場合には裁判官に決めてもらう,という流れです。
①話し合いで解決できるのが一番ですが,なかなか難しいのが実情です。意見の一致が難しいことが多いですが,中には意見は一致しているのに,その他の事情で話が進まないこともあります。
反対はしないが…印鑑登録証明書を提出するのは気が進まない,関わりたくない,他の皆が納得すれば自分も納得する(こういう方が複数いる場合,意見調整にも工夫がいります。),実印がない…などなどです。
これらは,それぞれの方々の年齢や立場,経験(知り合いで,安易に実印を押して大変な目にあった方がいた…など)などから生まれる「こだわり」です。よくよく話を聞いていると,仕方ないと思える場合もあり,気持ちがわかる分はがゆい思いになります。
こうした場合には,②調停を経由して③審判の手段で決着することとなりますし,弁護士が関わる案件ではそうなることがほとんどではないでしょうか。
結局②,③によるのであれば①は無駄なので,①話し合いなどするべきでないのではないかと考えることもあります。確かに,①話し合いは,結果が保証されていないのに時間がかかります。しかし,決して無駄ということではなく,事案全体についての理解はグッと深まります。そして,①における苦労が,②,③の手続きに活きることも多いです。
たとえば,①において把握した事情から,②,③でどのような流れになるか,見通しを立てやすくすることにもなります。また,各相続人の考えを踏まえて進めることで,②,③の手続きがスムーズにいきます。いくら③審判は裁判所が一方的に決めるといっても,ある相続人に強い不満があれば,高等裁判所,最高裁判所へ不服申し立てすることで,事案の解決が非常に長引くこともあります。
多数当事者の相続案件という大樹に挑む際,全体像を把握する意味でも,①話し合いのプロセスは重要であり,時間の無駄で片付けてはいけないことだと強く思います。急がば回れ,とはよく言ったと思います。
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