2023.03.24
営業秘密の漏洩を事前に防ぐためには、どうするべきか?
1 営業秘密の漏洩ルート
営業秘密の漏洩には、従業員のミス、従業員・退職者による意図的な漏洩、外部からの攻撃・侵入などがあります。近年は、ランサムウェア被害が急増しています。このように、様々な局面に情報漏洩のリスクが潜んでいます。
本コラムでは、特に、従業員・退職者による意図的な漏洩への対策に関し、論じます。
2 中小企業の現状
中小企業の現状として、
・就業規則には、会社の営業秘密を守る義務についての規定はない
・会社の情報は、社内のサーバの特定のフォルダに保存されており、そこへのアクセスにはパスワードの設定はなく、社員全員が自由にアクセスできる状態である
・退職する従業員との間では、個別の合意はしていない
という状況が、往々にしてあります。これでは、営業秘密の漏洩を防ぐことはできません。
3 営業秘密とは
まずは、会社内の情報が全て営業秘密に当たり保護されるわけではないという理解を持つことが必要です。
営業秘密にあたるためには、以下の3要件が必要です。
① 秘密管理性(秘密として管理されていること)
具体的には、営業秘密保有企業の秘密管理意思が、秘密管理措置によって従業員等に対して明確に示され、当該秘密管理意思に対する従業員等の認識可能性が確保される必要があります。
② 有用性(有用な営業上又は技術上の情報であること)
具体的には、生産方法、販売方法など当該情報が客観的に有用であることを指します。
③ 非公知性(公然と知られていないこと)
具体的には、保有者の管理下以外では一般に入手できない状態を指します。
4 情報漏洩対策
経済産業省 知的財産政策室作成の「秘密情報の保護ハンドブック ~企業価値向上に向けて~」(令和4年5月、経済産業省 知的財産政策室)があります。そこでは、具体的な情報漏洩対策には、以下の5つが有効とされます。
まず、物理的・技術的な防御として、①接近の制御(秘密情報に近寄りにくくするための対策)、②持ち出しの困難化(秘密情報の持ち出しを困難にするための対策)があります。
また、心理的な抑止として、③視認性の確保(漏洩が見つかりやすい環境づくりのための対策)、④秘密情報に対する認識向上(秘密情報だと思わなかった!という事態を招かないための対策)があります。
さらに、働きやすい環境の整備として、⑤信頼関係の維持・向上等(社員のやる気を高め、秘密情報を持ち出そうという考えを起こさせないための対策)があります。
5 退職者との個別合意
とりわけ、情報漏洩が発生しやすいのは、従業員が退職する時点です。退職者からは、退職時に改めて、社内資料の返却・廃棄、在職中に得た情報の秘密保持義務、退職後の調査協力を定めた個別合意を得ることが必要です。
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