コラム・チェックポイント

2023.04.26 内田清隆法律事務所

誰にでも肖像権がある

一般人か有名人かを問わず、誰にとっても、突然断りもなく他人から写真を撮られることや、自分の過去の写真や私生活面での写真が勝手に他人の目にさらされることは、不快であり、時には恐怖を感じることです。
そのため、誰であっても、プライバシー権の一種として、肖像権を持っており、他人から無断で写真を撮られたり、撮られた写真が無断で公表されたり利用されたりすることがないように主張できます。

なお、有名人には、肖像権の一種として、さらにパブリシティ権という権利が認められています。有名人は、その獲得した名声や知名度のために、お金をもらってCMにでることができ、その肖像が経済的価値を持ちます。パブリシティ権とは、その肖像の経済的価値を保護するための権利です。有名人は、自らの肖像がお金儲けに利用された場合は、パブリシティ権の侵害を主張することができます。

写り込みは必ずしも肖像権の侵害にならない!

誰にも肖像権があるとすると、他人が写った写真をSNSにアップすれば、その肖像権を侵害してしまうことになりそうですが、必ずしもそうではありません。

まず、他人が写っていたとしても、その写り込んだ人物が誰だか分からなければ、そもそも肖像権の侵害にはなりません。
また、写り込んだ人物の同意があれば、写真をSNSにアップしても、肖像権の侵害にならないのは当然です。

さらに、写り込んだ人物の同意がなくても、写真をSNSにアップされることによって生じる不利益が、「社会生活上受忍すべき限度を超え」るものでなければ、肖像権の侵害にはなりません。

肖像権の侵害になるのはどのような場合か?

「社会生活上受忍すべき限度を超え」るかどうかは、下記の点などを総合的に考慮して判断されます。

①撮影場所
 公の場所で撮影したならば、肖像権侵害になりなくい
②撮影された人物の活動内容
 人に見られたくないことをしていたなら、肖像権侵害になりやすい 
 単に歩いていていただけなら、肖像権侵害になりにくい
③撮影の態様
 写り込んだ人物にフォーカスしていれば、肖像権侵害になりやすい
④撮影の目的
 意図的ではなく、偶然に写り込んだだけなら、肖像権侵害になりにくい
⑤撮影の必要性
 その写真を見たい人が多くいる場合は、肖像権侵害になりにくい

これこれの場合は肖像権侵害にならないとは言いにくいですが、あるイベントの様子をSNSにアップするとき、そのイベント参加者が写り込んでいるだけなら、通常、肖像権の侵害にはならないでしょう。(隠れて参加するようなイベントなら別ですが)

要は、写り込んだ人物が、写真をSNSに写真にアップされることで嫌な思いをするのであれば、肖像権の侵害になり易いということです。写真をSNSにアップするときは、写っている人の気持ちを考えることが大切です。

最後に、裁判例の一つをあげて、肖像権侵害とされたポイントを紹介します。
(東京地判平成17年9月27日)
①全身像に焦点を絞り込み容貌を含めて大写しに撮影している点
②原告の着用していた服の胸部にSEXの文字がデザインされていた点
③写真の一部にたまたま写り込んだ場合や不特定多数の者の姿を全体的に撮影した場合ではない点(強い心理的負担を覚えさせるものであるとしている)
→公道を歩く原告の写真を無断で撮影し、ファッション紹介サイトに無断掲載した行為は原告の肖像権を侵害するとし、35万円の慰謝料を認容しています。