コラム・チェックポイント

2022.03.28 内田 清隆

海外企業へのライセンス契約の留意点

海外で物を売ろうとする場合,単に輸出する,販売店契約を結ぶ,代理店契約を結ぶなど様々な契約形態が考えられます。
その中の一つとして,現地企業とライセンス契約を結び,新興国の安価な労働力を見込んで,現地の工場で製造するといった方法もあります。
そのようなライセンス契約では,何に注意する必要があるでしょうか。

海外企業とのライセンス契約において,特に注意すべき点は二つあります。
①一つは法的規制の複雑さ,②もう一つは,ノウハウ流出リスクの高さです。

法的規制の複雑さ

国にもよりますが,ライセンス契約については,どんな内容であっても自由に契約を結べるわけではありません。
様々な法規制により,決められた内容の契約しか結べません。

一般に新興国においては,ライセンシーである現地企業の保護が優先されています。
そのため,例えば,「提供した技術の実施により第三者の権利を侵害したとしても責任を負わない」といった約束が無効になることがあります。

また,ライセンス契約については,登録が必要となる国もたくさんあります。
例えば,中国では,「技術輸出入管理条例」に基づき,ライセンス契約の内容を届出又は登録をしないと,ロイヤルティの支払を受けることができません。

その他,国に応じて,様々な規制がありますので,慎重な調査が必要となります。

ノウハウ流出のリスク

ある日本企業が海外企業と合弁で事業を起こしたのですが,ノウハウを相手が完全に理解したところで相手と連絡が取れなくなったという事案を経験したことがあります。
その後,そのノウハウを利用している企業を見つけました。おそらく元従業員からノウハウを得ていたのですが,証拠は全くなくどうしようもありませんでした。
日本においても大切なことですが,国際契約においてはノウハウが一度流出してしまうと取返しのつかない事態になりますので,特に注意が必要です。

ノウハウを守るためには,それぞれの国の法制度に応じたきちんとした内容の契約を結ぶことが当然ながら重要です。
しかし,それだけでは足りません。特に国際契約においては,信用できる相手と契約を結ぶことが,契約内容よりも重要となります。信用できる相手と契約を結んだうえで,さらに秘密が守られているか相手方が信用できるかをきちんと監視し続けることが大切であり,法律だけで守ってもらえるとは思わないことが肝要です。

確かに,ライセンス契約は,現地法人を設けるよりも手軽で,フランチャイズ契約よりも面倒はないかもしれません。
しかし,逆に,ライセンス契約は,もっとも技術を奪取しやすいと目をつけているライセンシーもたくさんいます。
そのため,ライセンシーの選定がもっとも重要になるわけです。