コラム・チェックポイント

2022.02.28 内田清隆法律事務所

所有者不明土地対策の救世主? 所有者不明土地管理制度の創設

従前の対応

ある土地を取得したいときは,その土地の登記情報を確認したうえで,通常,登記名義人との間で交渉をすることになります。
ただ,登記名義人がすでに死亡していて,相続登記もされていないため,登記名義人が現在の所有者でないことが多々あります。その場合は,登記名義人の相続人が当該土地を所有することになるので,戸籍調査を通じて,相続人を探し出す必要があります。
ここで,戸籍調査によって,相続人が誰かが分かれば,大きな問題はありません。相続人が何処にいるかが分からなくても,裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てるなどして,対応することができます。
ただ,相続人の氏名すら分からない場合は,それ以上どうすることもできませんでした。例えば,相続人が海外に移住して客死した場合,戸籍をたどることができないので,その相続人に子供がいるかさえ分からなくなることがありますが,そのときは,所有者が不明であるため土地の取得を諦めざるを得ませんでした。

「土地」単位の管理制度の創設

そうしたなかで,令和3年に民法が改正され,「所有者不明土地管理制度」が創設されました。この制度を使えば,相続人の氏名すら分からないケースでも,土地を取得する道が開けることなりました。
従前,所有者不明土地対策として,不在者財産管理人や相続財産管理人が利用されていました。これらの制度は,「人」単位の管理制度であるため,利用するためには,少なくとも,不在者が誰か,被相続人が誰かは分かっていなければなりませんでした。
一方,新たに創設された「所有者不明土地管理制度」は,「土地」単位の管理制度であるため,所有者が誰かが分かっていなくても,ある土地についての管理人の選任を求めることができます。
そのため,上述したケースのように,海外に移住して相続人が誰か分からなくなっても,所有者不明土地管理制度を利用して,土地の管理人を付けることができる可能性があります。
そして,選任された管理人は,裁判所の許可を得て,その土地を処分することができるので,場合によっては,その管理人から土地を売ってもらうこともできるかもしれません。
この所有者不明土地管理制度は,令和5年4月1日から施行されます。今まで取得を諦めていた土地についても,何か手を打てることができる可能性があります。ご関心のある方は,当事務所にご相談ください。