コラム・チェックポイント

2021.07.17 上田 晃一朗

事業再生の方法

経営破たん?会社は存続?

マスコミでは,よく「経営破たん」いう用語が使われます。

一言で「経営破たん」と言っても,色々あり,法的手続としては,大きく「清算型」と「再建型」に分かれます。

「清算型」とは,会社を消滅させる方法であり,法的手続としては,いわゆる「破産」です。

一方,「再建型」とは,会社を消滅させずに再建させる方法であり,法的手続としては,「会社更生」と「民事再生」に分かれます。

 

会社更生と民事再生の違い

「再建型」のうち,「会社更生」と「民事再生」の違いは,以下のとおりです。

一言で言うと,会社更生の方が,民事再生よりも,厳格な手続が要請されるというイメージです。

 

人気がない会社更生

両者のうち,圧倒的に数が多いのは,民事再生です。

なお,帝国データバンクによると,2021年の企業倒産件数(負債額1000万円以上)は8164件で,そのうち2806件は破産,民事再生は107件なのに対し,会社更生はわずか2件にとどまりました。会社更生は,その手続の厳格さゆえ,使い勝手が悪く,あまり人気がありません。特に,一般に予納金が数千万円以上となる点がネックです。

当事務所は,数年前に金沢地裁に会社更生の申立てをしましたが,10年ぶりの申立とのことで,すぐに大阪地裁に移送されてしまいました。

 

会社更生,民事再生は,取引先・世論から破産に近い印象を持たれ,これに伴う信用価値,事業価値が毀損し,その後の再建に障害となることもあります。

そこで,昨今,流行の手続として,増加傾向にあるのが,「私的再建」になります。

私的再建とは,裁判「外」で,金融機関「のみ」を対象に交渉する手続です。

金融機関のみを対象として,内密に行われるため,取引先や世論の信用を害しないというメリットがあります。

私的再建では,以下の2つがポピュラーです。

また,「経営者保証に関するガイドライン」が,平成26年2月から施行され,個人保証をしている経営者の救済も図りやすいものになっています。

 

ただ,企業様にとって,どの手続が最適か否かは,債務額,経営ビジョンなど,個別に具体的な事情次第となります。企業様の個性に応じて,最適な選択肢を提供するのが,弁護士の使命です。

「会社再建」といっても,ネガティブに考えず,お気軽にご相談ください。