コラム・チェックポイント

2025.01.15 上田 晃一朗

「No.1表示」の留意点

1 No.1表示とは
「No.1表示」とは、自社の商品等の品質が優良であることや価格などの取引条件が有利であることを訴求するために、「No.1」であることを強調して行われる広告(表示)を指します。例えば、「売上No.1(第1位)」、「安さNo.1(第1位、最安値)」などの広告が「No.1表示」に当たります。

No.1 表示は、その表示が合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には、実際のもの又は競争事業者のものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認され、不当表示として景品表示法上問題となります。

2 措置命令
No.1表示が景品表示法違反に当たる場合のペナルティとして、消費者庁長官は、当該事業者に対し、その広告の差止めや、再発防止のために必要な措置などを命ずることができます。これを「措置命令」と呼びます。
消費者庁は、2024年(令和6年)2月末から同年3月上旬までのわずかな期間に、集中的に11件の措置命令を発しました。そのうち、大半が「顧客満足度」、「口コミ人気度」などの第三者の主観的評価を指標としたNo.1表示(以下「主観的評価によるNo.1表示」といいます。)が対象となりました。

3 主観的評価によるNo.1表示の適法性
この点、2024年(令和6年)9月26日、消費者庁は、No.1表示に関して行った実態調査をまとめた「No. 1表示に関する実態調査報告書」を公表しました。

本報告書は、一般論として、No.1表示が合理的な根拠に基づくといえるためには、
⑴ 根拠とされる調査が、関連する学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法若しくは関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されていること、又は、社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されていること【調査の客観性】、
⑵ 表示内容が⑴の調査結果と適切に対応していること【表示と調査の適切な対応】
の2つを満たす必要があるとしてきた。
加えて、主観的評価によるNo.1表示の場合には、⑴の【調査の客観性】を満たすためには、
① 比較する商品等が適切に選定されていること
② 調査対象者が適切に選定されていること
③ 調査が公平な方法で実施されていること
が全て充足される必要があると示しました。

4 調査の客観性の要件
⑴ ①比較する商品等が適切に選定されていること
「No.1」を訴求する以上、原則として、主要な競合商品やサービスを比較対象とする必要があります。
例えば、「○○サービス 満足度No.1」等と表示しているが、○○に属するサービスのうち、市場における主要なものの一部又は全部が比較対象に含まれていないなどの場合は、問題になり得ます。

⑵ ②調査対象者が適切に選定されていること
表示内容から認識される調査対象者を選定する必要があります。
例えば、「顧客満足度No.1」などと、実際に商品・サービスを利用したことがある者を対象に調査を行っているかのように示す表示をしているが、実際には、単なるイメージ調査のみを行っているなどの場合は、問題になり得ます。

⑶ ③調査が公平な方法で実施されていること
恣意的な調査とならないようにする必要があります。
例えば、「おすすめしたい」商品を選択させる場合に、自社商品を選択肢の最上位に固定して誘導する、あるいはNo.1(○%以上)になったタイミングで調査を終了しているなどの場合は、問題になり得ます。

5 最後に
本報告書は、「今回の調査結果も踏まえ、不当なNo.1 表示等が疑われる事案に対しては、迅速に指導を行い是正を図ることを含め、引き続き、景品表示法に基づき厳正に対処していく」と結んでいます。
したがって、消費者庁によるNo.1表示への積極的な取締りが今後も続くことが見込まれますので、十分な注意が必要となるでしょう。